「富士見ロマン文庫」
金子國義の装丁に魅せられて、富士見ロマン文庫を蒐集した時期があった。当時は、古本屋のアダルトコーナーに一冊二百円から三百円で並んでいた。タイトルのダブりも多く、おかげで状態のいいものを選ぶことができた。
そんなロマン文庫も、近頃は立派なコレクターズ・アイテムとなった様子。雑本屋で見かける機会も減ったし、古書目録の値付も年々上昇の一途をたどっている。
特にベルメール風のイラストが描かれた後期のサド・シリーズなどは刊行部数そのものが少なく、セットものという条件もあいまって、ファンの間では貴重な存在とみなされている。けれどやはり、初期の表紙に描かれた透き通るような肌の少女こそ、この文庫の美を象徴しているのではないか。
そんな思いがあって、自分が所持する四十六タイトルの中から、これぞお気に入りという表紙をここに選んでみた。
1.「愛欲のロマンス(上・下)」
入手しにくい後期発刊シリーズの中でも、さらに輪をかけて
珍しいタイトル。
2.「少女ヴィクトリア」
この本は本文挿絵も金子が担当している。
3.「ガミアニ伯夫人」
4.「年上の女」
5.「パール傑作選 2」
少女の脚線美に注目。
6.「ドリー・モートンの思い出」
7.「最後の一夜」
自分にとって、この表紙の絵がいちばんのお気に入り。
8. 「マダム・エドワルダ、死者、眼球譚」
あまりにも有名な一冊。この装丁は、日本出版界の金字塔と
呼ぶべき仕事だ。
(これのみ角川文庫)
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